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「地球温暖化を低減させるためには肉食を控えよう」デービット・スズキ氏

果たしてヴィーガンが世界を救うのだろうか?

気候変動に関する記事のコメントを読んだり、ドキュメンタリー映画「Cowspiracy」を観ていると、ヴィーガンだけが唯一世界を救うかのように思えてくる。「Cowspiracy」では、ヴィーガニズムについて『この地球上で持続的に、倫理的に生きていくための唯一の方法』と大胆にも主張している。しかし、他の多くの問題と同様、この問題は複雑だ。

でもこれは本当だ。もし、多くの人々が、特に過剰消費をしている西洋社会で、肉食や動物性製品をやめるもしくはそれらを減らせば、環境と気候はかなりの恩恵を受けることになる。畜産業は温室効果ガスの莫大な排出量を産み出しており、多くの公害を発生させ、膨大な量の水を消費している。

家畜の種類とさまざまな農法との違いの中で、農業と畜産による利益のバランスを取ろうとするのと同様、環境被害の拡大をコントロールするのはそう簡単ではない。

畜産業がどれくらい温室効果ガスを増加させるかの概算は、地球全体の総排出量14%から50%以上と広範囲にわたる。農業はさまざまな方法で気候変動を悪化させている。二酸化炭素を減少させてくれる森林を、食物を育てるために伐採することは、温室効果ガス増加の結果を生むことになる。農業、特に商業レベルの規模では、処理過程や農産物の輸送で化石燃料の機械的な利用が必要なのだ。

人間によるCO2排出量の約9%が畜産業によるものだが、危険性は低いながらも、いろいろな意味でひどい他の温室効果ガスの排出量よりもはるかに大量である事実から、全体的な貢献度を特定するのは難しい。国連食料農業機関(FAO)によれば、CO2による地球温暖化の可能性の296倍、すなわち人間による亜酸化窒素の排出量65%を畜産業が生産している。加えて、畜産業は『反芻動物の消化器系による生産がその大半の、全人類に起因するメタンガスの37%(CO2による温暖化の23倍)と、酸性雨に著しい影響を与えているアンモニアガスの64%』の一因となっているそうだ。だが、メタンガスは約12年、亜酸化窒素は約114年も空気中に残り、CO2においては何千年も残り続ける。

排出量は家畜によっても異なる。豚と家禽は全世界の畜産排出量の約10%を占めるが、牛の約3倍の食肉を供給し(牛による排出量は約40%に及ぶ)、飼料も少ない。耕作農業でも地球温暖化をもたらしているものがいくつかある。湿地での米栽培はメタンガスの排出や、窒素肥料の使用による亜酸化窒素の排出を引き起こす。異なる農法は気候に対する影響もさまざまだ。そしてイヌイット族のような人々は生鮮食料が十分にないことから、肉食に適応している-そしてそれらを空輸することは狩猟生活よりも多くの排出量を産出させることになる。

真相は、私たちの食生活から食肉や他の動物由来製品を減らすか排除することが、とめどない気候変動から(その他の水不足や退化した生態系、水質汚染も含め)人類を守ることに必要不可欠なのだ。FAOの報告によると、肉消費率を何とかして減退させない限り、全世界の畜産品の需要は2050年までに70%増加する可能性がある。

全世界の肉消費率をみると、先進国での消費量には排除の余裕があることがわかる。2015年の一般による年間の肉消費量は世界平均で41.3キロ、発展途上国においては31.6キロ、それに比べて先進国は95.7キロも消費している。そして南アジアはどこよりも肉の消費量が少なく、年間で7.6キロだ。

イギリスのオックスフォード・マーティン学院の科学者たちによる研究では、全世界の農業関連の排出量は、もし人々が肉消費に関する簡単な健康管理ガイドラインに従えば、2050年までに1/3カットすることができ、ベジタリアン食が広まれば63%、ヴィーガン食なら70%カットすることができるそうだ。科学者たちは、動物性食品や肉食を減らした健康的な食生活に適応すれば、世界的な医療費を2050年までに年間10億ドル減らせることも発見している。

しかしながら、より良い農法への切り替えや地産地消の推進も、排出量の減少につながるかもしれないが、この話題はまた別のテーマである。それまでの間、私たちにできることは肉食、特に赤肉の消費を減らしたり、あるいはベジタリアンかヴィーガン食の支持に大きな一歩を踏むことである。

地球や私たちの健康のためになる一番の食事アドバイスは、もしかするとマイケル・ポラン著「Eat food, not too much, mostly plants (食べよう、腹八分目で、ほぼ植物性食で)」から得られるかもしれない。

デービット・スズキ氏は科学者、キャスター、作家、そしてデービット・スズキ財団の創立者である。この記事はデービット・スズキ財団のシニアエディター、イアン・ハニングトン氏の寄稿です。

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